田園調布の街に溶け込んだ洋風総菜の専門店 PATE屋
店主 林 のり子さん

PATE屋
店主 林 のり子さん

田園調布の街に溶け込んだ洋風総菜の専門店

田園調布「PATE屋」は、1973(昭和48)年にオープンした洋風総菜のお店。ご店主の林のり子さんは、かつて建築家として活躍された異色の経歴の持ち主だ。パテを作りながら<食>研究工房を主宰し、世界の食のしくみと文化について研究をしている。遠方からもパテを求めて多くの人が訪れる人気店で、その独特のスタンスは多くの人々に影響を与えている。今回はエコ、ロハス、スローライフと言われるスタイルの先駆者ともいえる「PATE屋」店主の林のり子さんにお話しを伺った。

まず、お店を開いた経緯について教えてください。

林さん:お店をはじめた直接のきっかけは、アメリカで手製のレバーペーストに出会ったことです。レバーペーストは小さいころから私の好物だったのですが、工場でつくるもの、と思い込んでいました。それが、自分でも作れそうだと分かり、自分でも料理書を参考につくり始めるようになりました。

PATE屋 店主の林のり子さん林さん

当時、建築家だった私は、ロッテルダム、パリ、東京と場所を変えながら建築の製図板に向かう毎日でしたが、趣味としてパテ作りで試行錯誤しているうちに、本業の設計の仕事よりも楽しくなってしまいました。その当時、うちの子どもたちのために離乳食としても使っており、徐々に噂を聞いた友人たちにも分けているうちに需要も少しずつ増えていきました。そして、ついに自宅の一角で営業許可をとることになりました。

PATE屋レジ横で販売されているアンチョビ

手伝ってくれていた人と「石の上にも三年」と、なんとか三年は続けようと話し合っていたのですが、いつの間にか40年以上が過ぎて、今でも相変わらずパテを作る毎日です。仕事場で材料にふれながら材料の性質、熱の性質、一つ一つの調味料の持つ特質をボンヤリ考えているときが、私にとっては一番楽しいひとときです。パテは肉食地帯の保存食なので、それをつきつめるうちに世界の食文化を探訪することになってゆきました。

どのような商品を扱っているのでしょうか。

PATE屋スタッフが一工夫した呼び鈴

林さん:開店当初のメニューは、レバーパテをはじめとした洋風惣菜だったのですが、ここ数年は身近な素材を私たちなりに見直す方向でメニューを決めています。レバーパテの味付けはシンプルに塩とハーブのみ。他は素材によって味噌味だったりカレー味だったりいろいろです。「砂肝カレー風味」などはワインだけでなくビールのおつまみにもぴったりです。ヨーロッパ、特にオランダなどでポピュラーな「ニシンの酢漬け」はうちの看板メニューのひとつです。男性客を中心にすごく人気がありますね。ノルウェーで船上冷凍されたニシンを使っており、昔からこの冷凍ニシンをお店から切らしたことはないくらいです。平日は女性客、土曜日にはお酒の肴を求めてなのか、男性客が多いですね。

おすすめの品を教えて下さい。

PATE屋厨房に貼られたメモ

林さん:まずは看板商品の「レバーパテ」ですね。他には色々とありますが、「クリームチーズペースト」「牡蠣ペースト・法連草入り」などはいかがでしょうか。これらの3種類は、色も味の傾向も違うため、それぞれ楽しんで食べられると思います。初めての方には、50グラムずつぐらいから少しずつ選ぶことをおすすめしています。レバーパテは野菜が沢山入っていて、そのままトーストに付けたり、生クリームやブランデーでゆるめてカナッペにするのもいいです。隣のカフェ「えんがわinn」でワインと一緒にいただくこともできますよ。

かつては清水ミチコさんがスタッフで働いていたそうですね。 才能のある方が多く集まってくるのでしょうか。

PATE屋店は緑に囲まれている

林さん:本当にスタッフに恵まれていると思います。今も美術大学の学生が来ていて、若い人たちが私の研究のパネルづくりなども楽しんでやってくれています。料理の現場では、まず「ふしぎ」に驚き、それから「なぜ?」とそのしくみを追求することの繰り返しです。新人スタッフがそういう「PATE屋方式」を理解し始めてくると嬉しいです。経験の有無に関わらず、感性豊かな人たちの自由な発想のきっかけが、この店を支える原動力になっているのは確かです。

何か簡単にできて林さんらしい料理があれば教えてください。

PATE屋林さん

林さん:みんなでワイワイ食卓を囲むときの定番に「納豆焼き」というのがあります。私は納豆の粘りが好きじゃなかったので、パラパラにしてカリカリに焼きあげるようにしてみました。納豆に小麦粉をまぶしてバラバラにした後、溶き卵とニラを加えて両面をガーリックオイルでこんがり焼きます。醤油、カラシなどでいただきます。カリッとして冷めても美味しいのでおしゃべりしながら、ビールがとてもすすみますよ。

田園調布という街が林さんに与えた影響はありますか?

田園調布の街に溶け込んだ洋風総菜の専門店/PATE屋<br />店主 林 のり子さん「田園調布」駅前

林さん:両祖父母は明治ハイカラ世代で、1927(昭和2)年に田園調布に転居しました。そして両親はモガ・モボ(モダンガール・モダンボーイ)世代。その生活や食の習慣は、通低音として私の中に溢れています。私たちは小さいときから牛タンやレバーを使った洋食を食べること、つくることに慣れていました。なので、田園調布でお店を開くならパテかな?と思うきっかけになったのというのはありますね。

田園調布という街の魅力を教えてください。

田園調布の街に溶け込んだ洋風総菜の専門店/PATE屋<br />店主 林 のり子さん「多摩川台公園」から望む多摩川

林さん:田園調布は地形が面白いんです。田園調布を開発した渋沢秀雄さんが、開発する際に宝塚を開発した小林一三さんから「地形をいじらないで、電気・ガス・水道などのインフラをしっかり整備すること」とアドバイスを受けたそうです。そのため自然や坂がたくさん残されています。国分寺崖線といって、多摩川の流れから出来た坂や崖がとても興味深いです。地形を感じながらの散策はすごく楽しいですよ。田園調布と言うと、ファッションの街・自由が丘の隣ってすぐに思う人が多いのですが、多摩川に近いという自然の面にも目を向けてほしいです。「これって何かな何かな」って地図を見ながら歩いたり、もともとあるものを活かした良さをもっと感じてほしいですね。

田園調布の街に溶け込んだ洋風総菜の専門店/PATE屋<br />店主 林 のり子さん

今回、話を聞いた人

PATE屋

店主 林 のり子さん

所在地:世田谷区玉川田園調布2-12-6
電話番号:03-3722-1727
営業時間:11:00~18:00※土曜日11:00~12:00、13:00~18:00
定休日:日曜・月曜・火曜・GW・年末年始・祝祭日
URL:http://pateya.com/main/

書籍:『パテ屋の店先から―かつおは皮がおいしい』
林のり子(著)アノニマスタジオ(出版)